しつこくタクミにじゃれつこうとするぎいを何とか引き剥がしてケージに戻し、怯えるタクミを隣の部屋へと逃がし、何とかその場は落ち着いた。 はぁはぁと息を切らし、ギイと託生は傷だらけになりながら、ぐったりとソファに沈み込んだ。 「だめだな、これは」 「驚いた」 「っていうか、いきなりタクミに襲い掛かるとは何考えてんだっ、あいつは」 ギイは愛するタクミがいきなりぎいに飛びかかられたことに思わず声を上げた。 託生だって一方的に愛するぎいが悪いなどと言われては黙っていられない。 「襲いかかるだなんて人聞きの悪い。仲良くなろうとしただけだろっ!」 「いーや、殺意があった」 「あるわけないだろ」 ぎいに対して冷たいギイの物言いに、託生は呆れ返ってしまった。 「ギイはぎいのこと嫌いだからそんな風に思うんだろ?そりゃぎいはちょっと我侭なところはあるかもしれないけど、ぼくの言うことはちゃんと聞くいい子だよ」 「いい子がタクミを襲うのか?」 「だから襲ってない!」 「襲った!」 喧々囂々と言い合っていた二人だが、やがて託生はケージを手にすると立ち上がった。 「やっぱりぼくたちの同居は無理だね」 「同居じゃない、同棲だ!」 「一緒だろ!」 「一緒じゃない!」 章三あたりがいれば、いい年をしてくだらないことで言い争いをするな、と言われそうだが、とにかく二人とも愛猫のこととなると後には引けない。 「とにかく、この話は白紙に戻すから」 「それはだめだ」 「しばらく連絡しなくていいからね、ギイ」 つーんとそっぽを向いて、託生はギイの横を通り過ぎて、さよならも言わずに部屋をあとにした。 あとに残ったギイは腕を組んだまま、見送りにも出なかった。 |