猫飼ってみました 11


「馬鹿だろ?」
どうしても一人でいると落ち込んでしまいそうなので、ギイは章三を呼び出して近所の居酒屋で飲んでいた。
コトの顛末を聞いた章三は、一刀両断に切り捨てた。
「どうして猫ごときで喧嘩にまで発展するのか、僕には理解できないね」
「猫ごときだとー。オレのタクミのことを襲おうとしたんだぞ、黙ってられないだろ」
「黙っておけよ」
「タクミがいじめられるのを黙ってみてられるか!」
すでに酔っ払い状態のギイに、章三は舌打ちする。
高校時代からギイと託生の良き相談役、いや、単なる愚痴と惚気の聞き役として、章三はことあるごとに二人の痴話喧嘩を見てきたが、今回のはその中で一番馬鹿馬鹿しいものだと思った。
「それにしても葉山のとこのぎいは、まんまお前じゃないか」
「何がだよ」
「タクミに飛びかかったんだろ?そりゃいじめたいわけじゃなくて、好きだからじゃないのか?」
「は?」
「お前さんが葉山に一目惚れして、有無を言わさず自分のものにしたのとそっくりじゃないか」
「オレはいきなり襲ったりしてないぞ。ちゃんと手順を踏んでだな・・・」
「そういう生々しい話はしなくていい」
章三は心底げんなりしたように手を振った。
「ぎいはタクミに一目惚れしたんだろ。で、仲良くなりたくて飛びかかった、と」
「好きなら好きで手順を踏め!」
「お前が言うな」
ギイは、あんな猫にうちのタクミはやれんーと、すっかり猫馬鹿っぷりを発揮して、その夜はぐだぐだになるまで飲み明かした。
酔いつぶれたギイを連れて帰る途中、夜遅くにごめんと託生からメールが入った。
「おいおい、今度は葉山かよ」
明日会いたいんだけど、との託生の誘いに、章三はどうせならまとめて会えば一度で済んだものを、と忌々しげに、
「了解」
と返信をした。




Back

あとがき

やっぱり巻き込まれる章三。もう死ぬまで二人の相談役決定。