「静かだな」 猫の間の扉の外で、ギイと託生は耳をすまして中の様子を伺ってた。 そろそろ小一時間がたとうとしている。お腹も空いてくる頃だろうし、二人がどうなったかさすがに心配にもなってきた。 乱闘になったような鳴き声は聞こえてこなかったので大丈夫かな、と思う反面、声も出ないほどに痛めつけられたらどうしよう、とやはり不安にもなる。 「ぎい・・・?」 託生がそっと扉を開けてみる。中は猫が喜びそうな玩具でいっぱいだ。 まったくギイはどこまでもタクミに甘いらしい。 ぐるりと辺りを見渡して、部屋の片隅にあるケージの中にいる二人を見つけた。 「あ、いた」 託生が上から覗き込むと、気づいたぎいがついっと顔を上げた。 その傍らには疲れきった様子のタクミが丸くなって目を閉じている。 「仲良くなれたの?ぎい?」 声をかけると、ぎいはそれに答えるように喉を鳴らして、にゃあと短く鳴いた。 その鳴き声はどこか得意気にも聞こえる。 何があったかは分からないが、とにかく仲良くなれたようなので、託生はやれやれとほっと肩を力を抜いた。 「あーあ、とうとうタクミがオレ以外のやつと・・・」 隣からケージの中を覗き込んだギイがどこかがっくりと肩を落とす。 溺愛といっても過言ではないギイのたくみへの愛情に、時々託生は微妙な気持ちになる。 「ギイ、本当にタクミとおかしなことしてないよね?」 「何だよ、おかしなことって!」 「・・・」 「ヤキモチ焼いてくれてるのか?可愛いな、託生」 「違います」 ギイが託生を抱き寄せて口づけようとすると、ケージの中にいたぎいが飛び出してきて、ギイを邪魔するように託生との間に割り込んできた。 「何だよ、お前はタクミと仲良くなったんだろ?」 「にゃー」 それがどうした、と言わんばかりにぎいが託生にしがみつく。 一緒に暮らすようになったら、もしかして毎回こんな風に邪魔されるのだろうか、とギイは少しばかり不安になった。 けれど、託生が愛おしそうにぎいの喉を擽り、そしてちゅっと額にキスをして、 「ぎい、ぼくのことはいいから、ちゃんとタクミと仲良くするんだよ」 と言うと、ぎいは 「にゃ」 と小さく鳴いてタクミのそばに戻った。 |