ぎいとタクミが仲良くなったおかげで、託生はようやく一緒に暮らすことを承諾してくれた。 もちろんそれは喜ばしいことであり、幸せなことには違いないのだが。 「何か想像していたものと違う」 ぽつりとつぶやくと、隣に座る託生が怪訝そうに視線を上げた。 お互いの猫を合わせて4人での生活である。それぞれの猫の習性も違うし、最初はいろいろと慣れないこともあるだろうとは思っていた。 けれど、ぎいとタクミは思っていた以上に仲良くなり(というよりも、ぎいがひたすらべったりとくっついているというのが正しい)、オレも託生もほっとした。 しかし、である。 タクミと仲良くなったくせに、ぎいはどこまでもオレの邪魔をしてくれるのだ。 ベッドの中では絶対にオレと託生の間に割り込んでくるし、ちょっとでもいちゃいちゃしようものなら、柔らかい肉球でぺしぺしと叩いてくる。 おまけにオレがタクミを構おうとすると、これまた同じく牽制してくる。 託生もタクミも自分のものだと言わんばかりだ。 タクミもタクミで、オレよりもむしろ託生に懐いてしまい、まったくオレの味方はしてくれない。 今も託生の膝にはタクミがいて、オレとの間にはぎいがちゃっかり座り込んでいる。 孤独である。 「こいつのせいで、ぜんぜん甘い雰囲気に持ち込めない」 「そうかな。ぎいのおかげで、ぼくは普通の暮らしができてると思うんだけどな」 放っておくと、ギイはすぐにくっついてくるから、と託生は苦笑する。 当たり前だ。同棲だぞ、同棲。いちゃいちゃしないでどうする。 「ぼくは大好きな猫と仲良く暮らせて幸せだけどな」 「大好きな猫?」 「他に何が?」 「・・・オレ、猫に負けてるのか?」 くすくすと笑う恋人の額をぴんと弾いて、そのままキスしようとすると、お約束のように、ぎいが邪魔をしてくる。オレが文句を言うより早く、託生がぎいを抱き上げた。 「ほら、ぎい。あんまり邪魔ばっかりしてると、今度はタクミに愛想尽かされちゃうよ?」 託生はぎいを足元に下ろすと、オレの膝の上に跨った。 拗ねたふりをするオレの肩に手を置いて、小首を傾げる。 「猫に負けてなんかないよ。ぼくが一番好きなのはギイだから」 「・・・・」 「大好きって言ってよ、ギイ」 「いくらでも」 託生からの口づけを堪能しようとした時、足元でぎいがにゃーと鳴いたが、とりあえず無視することにする。 お前にはタクミがいるだろ、オレと託生の邪魔をするんじゃない。 そこへタクミがやってきて、いつまでも託生のそばから離れようとしないぎいのしっぽをむにっと踏んづけた。 最愛の恋人と可愛い猫との生活は前途多難ぽいけれど、それはそれで案外楽しいもの・・・かもしれない。 |