「静岡からお越しの葉山託生さま、お友達がお待ちですので・・・」 園内に響いたアナウンスにびっくりして、ぼくはダッシュで入口近くの案内所へ飛び込んだ。 そこにはのんびりと談笑なんてするギイと章三がいた。 「よ、葉山」 「遅いぞ、託生」 「な、な、何言ってんだよっ!!!2人してどこか行っちゃって、ぼくがどれだけ探したと!」 はぁはぁと息切れするぼくに、はいはいとギイがお茶を差し出す。 「違うだろ、迷子になったのは葉山の方だ、僕たちもけっこう探したんだぞ。お前、携帯持ってないしさ」 「そうそう、で、てっとり早く迷子のアナウンスかけてもらうか、ってことになってな」 にっこりとギイが言う。 3人で遊びにきていた遊園地。 ちょっと目を離した隙にいなくなったのは2人の方で、絶対にぼくは悪くない。それなのに、園内アナウンスで名前を呼ばれてしまった。 「恥ずかしいだろっ!!」 「そう思って、年齢は伏せてもらったんだ、文句を言うな」 「言うよ!!!知ってる人がいたらどうしよう」 「いないって」 楽しそうに笑う二人だが、こういう予感は当たるもので、休み明けに祠堂へ戻ると、ぼくが遊園地で迷子になったということはみんなに知れ渡っていた。 もちろんぼくはしばらく2人とは口をきかなかった。 それくらい怒ってもいいはず、だと思う。 |