四六時中も好きと言って
夢の中へ連れていって 「言われてみたいもんだよな」 一瞬、ギイが何を言ってるのか分からず、ぼくは「は?」と間抜けた声を出してしまった。 夕食後、寮の305号室で、ぼくは宿題を、ギイはさっさと終えてベッドでごろごろしている時のことだった。 ポータブルプレイヤーから小さく流れていた曲は夏の定番ソングで、普段歌謡曲なんてあまり聴かないぼくだって知ってるくらいの有名な歌だった。 「んーだから、この歌みたいに言われたいなぁって」 ギイがどこかうっとりしたようにつぶやく。 四六時中も?好きって言われたいの? 誰に?なんて今さら言うつもりもないし、ギイが言うからには、それはきっとぼくに言って欲しいってことなんだろうけど。でも、どうなんだろう、それって。四六時中て一日中ってことだよね? 「でもギイ、四六時中も好きだなんていわれたら、大変じゃない?」 「託生ぃ、何でお前はそう現実的なんだよ」 ギイはがっくりと脱力したように枕に突っ伏してしまう。 「超現実主義のギイに言われたくありません」 「それに、オレが言ってるのはそういう意味じゃない」 「え、違うの?」 「まぁ託生に四六時中好きって言ってもらうのもいいけどさ、オレ、託生から『四六時中も好きと言って』って言われてみたいんだよ」 「はぁ?」 何なんだ、それは? ぼくは呆れて笑ってしまう。 「そんな無茶な我侭言って欲しいだなんて、物好きだね、ギイ」 「そうか?もし託生にそんなこと言われたら、オレ、ちゃんと四六時中好きって言うぜ」 「・・・・・・」 そんなこと言ったら、ほんとにギイはやりそうだから、とてもじゃないけど言えないよ。 何しろ軽い気持ちで『毎日国際電話をかけて』と口にしたら、ほんとにそうした前科がある。 「なぁ、託生」 「言いません」 「好きだよ、託生」 「だから頼んでないだろっ!」 くすくすと笑って勢いよくベッドから起き上がったギイが、ぼくを背中から抱きしめる。 「好きだよ」 甘い囁きにうっかりと顔が赤くなるのが分かる。 「・・・・四六時中は言わなくていいよ」 「じゃ、せめて夢の中へ連れてってやるよ」 口づけられてベッドに誘われる。 まだ宿題してる途中だからとか、まだ消灯さえしてないのにとか、そんなこと言ったってギイには通じやしないのだ。 確信犯のギイに、ぼくは一度だって勝てたことはない。 ギイが妙に気に入っていたその歌を、ぼくが再び聞くことになったのは、1年後の夏の終わりのことだった。 休日、街へ下山していたぼくと章三は、偶然にも同じように下山していた矢倉と八津に出くわした。 まぁ休日の街では必ずと言っていいほど、祠堂の生徒を見かける。何しろ狭い街なのだ。そして土日には集中して生徒たちが下山する。誰にも会わない方がめずらしいくらいだ。 矢倉はぼくたちに気づくと満面の笑みを浮かべて近づいてきた。 「いいところで会った、葉山、カラオケ行こうぜ、カラオケ」 「はい?」 あまりにも突然の誘いに、ぼくはきょとんと矢倉を凝視してしまった。それを見た八津が、申し訳なさそうに隣で説明してくれる。 「実は久しぶりにカラオケでも行って、日ごろの受験勉強のストレス発散しようってことになったんだけど、ここのカラオケBOX、5名以上だと割引があるんだよ」 「僕と葉山で4人だろ?まだ足りないじゃないか」 章三が指摘すると、矢倉がニヤリと笑った。 「ギイにも声をかけてある。用事を済ませたらここに来るはずだ」 「何だって!!お前、ギイに声かけたのか!?」 章三が飛び上がらんばかりに驚き、そのあまりの驚きっぷりに八津が目を丸くした。 もちろんぼくもぎょっとした。何を隠そう(いや、隠してないけど)ギイはあまり歌が上手じゃない。 どっちかというと下手なのだ。 章三に言わせると 「致命的な音痴」 ということになるのだが、でもリズム感はいいし、奇跡のレインボウボイスと言われるほどに声もいい。 なのに、どうにも音程が見事に外れるのだ。 一度だけギイが歌っているのを聞いたことがあるのだけれど、あんなに完璧な人なのに、できないことってあるんだなぁと思った覚えがある。 そのギイをカラオケに誘うとは!さすが矢倉、すごい度胸だ。 「矢倉、ギイが来るなら僕は遠慮する」 章三が冷たく言い放ち、その場を立ち去ろうとする。矢倉があわててその肩をがっちりと掴んだ。 「赤池〜、お前ヤツの相棒のくせして何だ、その言い草は」 「言いたくもなる。お前、あいつの歌聞いたことないのか?そりゃもうひどいもんだぞ」 「いや、噂では聞いたことはあるがな、実際には聞いたことがない。だから、ちょっと聞いてみたいと思ってさ」 「怖いもの知らずだな」 「そんなにひどいのか?」 矢倉は楽しそうに笑う。 「ひどいなんてもんじゃない」 きっぱりと章三が言い切る。 相棒だけあって容赦がない。 いや、しかし、確かにあれは聞いた人じゃないと分からないよな。 けど、章三の発言はあまりにも厳しすぎる。 ぼくはギイといられるというだけで、カラオケだろうが何だろうが嬉しいなぁと思ってしまうんだけど、章三はそんな気はまったくないようで、 「わかった、カラオケに付き合ってもいいが、ギイには歌わせるなよ、それが条件だ」 と言い、 「お前、ほんとにひどいな」 と、矢倉がけらけらと笑う。 二人が漫才のような会話を続けているところへ、ギイがひょっこりと姿を見せた。 ぼくに気づくと、優しく笑う。その笑顔にぼくも笑う。 今日は約束をしていたわけじゃなく、本当に別行動のはずだったから、こういうサプライズはすごく嬉しい。 「何だ、託生も誘われたのか?」 「うん、5人以上で割引だからって」 「そっか」 こうして言葉を交わすのは久しぶりだ。 ギイがすぐそばにいるだけで、ぼくはわけもなくほっとして胸が温かくなる。そして自分がどれほどギイのことを好きなのか、再確認させられてしまうのだ。 「それにしても、ギイがカラオケなんて珍しいね」 「矢倉に半ば強制的にな」 「そうなんだ」 「っていうか、お前にも声かけるからって言われてな」 ギイがいたずらっぽくウィンクしてみせる。 矢倉ってば、適当なこと言ってギイのこと誘ったんだなぁ。だってぼくと章三にはそのあと声をかけたんだから。でもちゃんとこうしてぼくたちを引っ張り込んでるんだから、何という強運の持ち主。ギイに負けてないよなぁ、そういところ。 「おい、ギイ、お前本当に歌うつもりか?」 章三がギイに詰め寄る。 「当たり前だろ?カラオケBOXって歌を歌うところだよな?」 「お前のは歌じゃない」 「赤池くん、そこまで言ったらギイがかわいそうだよ」 いくら本当のことでも、と心の中でつぶやくが、それは口にはしない。 「まぁまぁ。とりあえず、中に入ろうよ。喉が渇いたし」 八津がぼくたちを促した。確かに往来であれこれ言っているよりは、さっさと中に入った方が目立たない。 渋る章三を引っ張って、ぼくたちは店の中へと入った。 滅多にカラオケに来ることはないので、久しぶりに入った部屋はぼくが知っている頃よりもずっと進化していた。採点ができたり録画ができたり、知らない人とデュエットできたり。よくこんなこと思いつくなぁと、ぼくは説明書を読んで感心してしまった。 「託生、何歌うんだ?」 ぼくの隣に座ったギイが入力用のリモコンを手渡す。 「あー、あんまり最近の曲って知らないんだよね」 どちらかというと、歌うよりは聞く方が好きなのだ。ぼくは手渡されたリモコンをそのまま章三に回した。 章三は一瞬ぼくを睨んだけれど、さっさとリモコンで曲を入れた。トップバッターというものは緊張するものだと思うのだけれど、章三は臆することなくマイクを握ると、淡々と歌い上げた。 その次は矢倉。その次は八津へとマイクが回り、再びぼくへと返ってきた。 「葉山、いい加減諦めて何か歌えよ」 「わかったよ」 ちょっと古い曲だけどまぁいいかと思って選んだ歌に、何故かみんなが「懐かしい〜」と妙に盛り上がり、そこから懐メロ大会へと突入してしまった。 そうなると、ギイは一人蚊帳の外になってしまう。 さすがのギイも、日本にいない頃の歌ばかりが流れると「わからない」と首を傾げてしまうのも仕方ない。 ギイの歌を聴きたくない章三は、「懐メロ縛りだ」と勝手に決めて、何とかギイに歌わせないようにと必死である。ぼくたちには良く知った懐かしい曲でも、ギイには初めて聞く歌も多いようで、 「ぜんぜん聞いたことない?」 八津の問いかけに、ギイは首を振った。 「そうだよなぁ、アメリカで日本の歌謡曲なんて流れないもんな」 章三がよしよしと満足そうにうなづく。そんな章三に苦笑しながら、矢倉がリモコンをギイへと回して言った。 「じゃあギイ、この頃アメリカで流行っていた歌でいいから歌えよ」 「矢倉、余計なこと言うな」 「英語の歌なら、あんまり下手さ加減がわからないんじゃないか?」 「英語で歌ったって音痴は音痴だ」 そんな二人のひそひそ話を他所に、ギイがそうだなぁと考えながら曲を入れる。 流れてきた曲は、懐メロと言っていいくらいには昔の曲で、ぼくたちもよく知ってるもの・・・のはずだった。 ギイが歌い始めるまでは。 「・・・・・おい、これって本当にあの曲か?」 矢倉が眉をひそめて、章三に尋ねる。 「だから言っただろ」 「いやー、これはなかなかすごいな。まったく別の歌になってる。見事だ」 「でもさすがに英語の発音はいいよね」 感心したようにうなづく矢倉の隣で、笑いをこらえた表情をしていた八津が微妙なフォローをする。 部屋の中に何ともいえない微妙な空気が流れたが、当のギイはまったく頓着してないようで、最後まできっちりと歌い上げた。 まったく違うメロディで。 「・・・ギイ、お前、そこまで違う歌にして恥ずかしくないのか」 章三が言うと、ギイはどうして?と聞き返す。 「オレはプロの歌手じゃないんだから、別に下手でも問題ないだろ?ギャラもらってるわけじゃないんだし。歌いたい時に歌うぞ」 「迷惑なヤツだな」 「何でだよ」 ギイは腑に落ちんという顔で腕を組んだ。そのあともギイと章三は不毛な会話を続け、それに矢倉が横槍をいれ、八津がまぁまぁと三人をなだめる。 「しっかし、驚いたな。噂通りの音痴っぷりで」 「うるさいぞ、矢倉」 「いやー、何でも持ってる男だと思ってたが、歌だけはだめだったか、ギイ」 ニヤニヤと笑う矢倉をギイが一睨みする。 「何だかんだ言いながら、けっこう楽しそうだよね、ギイ」 八津がひそりとぼくに耳打ちする。 確かにね、とぼくも笑う。 自分は音痴だからって、気にしてぜんぜん歌わないよりも、こうして笑いに変えて堂々と歌ってくれた方が一緒にいるぼくたちは楽しい。 章三がどれほど文句を言ったって、矢倉が呆れた顔を見せても、ギイはちっとも怒ったりしない。むしろ楽しそうにも見える。 すべてにおいて完璧なギイが、もしこれが唯一の弱点だとばかりに隠そうとしたりしたら、そっちの方がちょっと嫌な感じがするんじゃないかと思う。 だから、ぼくはギイが歌うの、実はそんなに嫌じゃないんだ。 いつも完璧なギイの、普通っぽい一面が見られるから。なんて言ったら怒られるかな。 「ギイは日本の歌謡曲って知ってるのかい?」 八津の質問に、ギイはそうだなぁと考える。 「寮にいるとそんなに音楽って聞かないからな、でもやっぱり洋楽の方が馴染みはあるんだよな」 「そうだよね」 「日本の歌謡曲で歌える歌はあるのか?」 いや、歌わなくてもいいがな、と一言加えて章三が尋ねる。 「あの歌、何だっけ、託生」 「え?何?」 突然話を振られて、ぼくは聞き返す。 ギイは、ほらほら、と言ってサビの部分を歌う。 矢倉も八津の章三もさっぱり分からんと首を傾げていたけれど、ぼくにはそれが、去年寮の部屋で一緒に聞いたあの夏の定番曲だとすぐに分かった。 ぼくがタイトルを口にすると、ギイはそれそれと笑みを浮かべ、あとの3人は「何で分かるんだ!」と一斉にどよめいた。 「やっぱり愛の力だよなぁ、託生」 「いや、そういうんじゃないんだけど・・・」 「お前、嘘でもそうだって言えよ。冷たいヤツだな」 ギイががっくりと肩を落とす。 だって、さすがに愛の力だけじゃギイの歌の解読は無理だ。ぼくが曲のタイトルが分かったのは、単にギイが歌うとどういう風に音がずれるかがだんだん分かってきたというか、まぁそれだけのことなのだ。 「あの曲、良かったよなぁ?託生」 「・・・・」 意味深に笑われて、ぼくは思わずうつむいた。 あの曲の歌詞のように、ぼくに「四六時中も好きと言って」と言ってほしいなんて馬鹿げたことを言っていたギイは、あのあとぼくをベッドから出してくれなかった。 (うわ、忘れてたのに、鮮明に思い出しちゃったじゃないか) ぼくの顔が赤くなったのを見て、ギイはくすくすと笑った。 「じゃ、託生のために、オレがあの歌、歌おうかなー」 「待て、ギイ!お前、あの名曲を歌うつもりか!!」 章三が慌てて待ったをかける。 「犯罪だぞ、それは。あの歌に申し訳ない」 「失礼なヤツだな、こうなったら絶対に歌ってやる」 ギイが章三の手からマイクを奪い取る。 「あれはいい曲だよな。好きな相手にああいうこと、言われてみたいって思うよな」 矢倉が独り言のようにつぶやき、それを聞いたギイがそうだよなーと、これまた意味深にぼくを見る。 だからもういいってば。とぼくはそっぽを向く。 けど、たぶん、矢倉が言ってるのは、ギイとは違って、八津から「四六時中好き」と言われたいって意味なんだろうなと思う。長かった片思いがようやく終わって、二人は今一番幸せな時期じゃないかと思うから。 四六時中好きって言ってほしいんだろうなぁ、矢倉は。 「いいことを思いついた」 章三が嬉々としてリモコンを手にする。 「BGMの音量をなるべく小さくして、ギイの歌と曲がずれてることをなるべく分からないようにするっていうのはどうだろう。で、エコーもかける」 「あー、どうかな。どっちにしても違う歌になるんだから意味あるかな」 八津の突っ込みに、章三はいやいやと首を振る。 「BGMとあまりにも違うから下手に聞こえるわけだ。ならいっそのこと違う歌でもいいから、不協和音を耳にしないようにした方がいい」 「赤池くん、よっぽどギイの歌聴きたくないんだね」 ここまで徹底してるといっそ潔い。 とりあえず、ギイには知られないように、BGMの音量を下げてみる。エコーもなるべくかかるようにして、これはあの名曲じゃないって思えるようにスタンバイした。 みんなさっきのギイの歌で、彼がどれくらい下手かは分かっているので、曲が流れ始めると覚悟を決めて体勢を整えた。 ところが、である。 「あれ?」 ギイが歌い始めると、八津が不思議そうに首をかしげた。 「何か普通っぽくない?」 「でもぜんぜん違うメロディにはなってるけどな」 「だが、何だか違和感ないな」 章三のアイデアがぴたりと当たったのか、アカペラぽくなってしまったギイの歌は、確かに元の歌からはかけ離れていたけれど、眉をしかめるようなひどいものではなく、ちゃんとした歌に聞こえた。 「えーっと、別の曲だと思えば、上手じゃない?」 ぼくが言うと、章三も確かにとうなづいた。 もともとギイは声はすごくいいのだ。 歌詞は同じで、別の歌。と思えば、これはなかなかいい歌になってるんじゃないだろうか。 ギイ、もしかして作曲の才能がある、とか? みんなが不思議そうな面持ちでギイの歌を聴いていたが、曲が終わると、ギイの方が不思議そうな顔でみんなを見渡した。 「何だよ、そんな顔して」 オレが歌が下手なのは今更だろ、と言うギイに、 「いや、ギイ、今のはまだ聞けた。元の曲ではなかったが、ちゃんと聞けた」 「うん、意外といいかも」 「別の名曲になってたよ」 とみんなが口々に褒めた。 とはいうものの、もう一度同じフレーズで歌うことはできないらしいので、これを上手だったと言っていいものかは悩むところである。 そのあと、やっぱりギイの歌を聞きたくない章三が「演歌縛りだ」とギイシフトを強いたのだが、どうして知っているのか、ギイは「与作」をこれまたまったく違うフレーズで歌い上げ、ぼくたちを悶絶させた。 2時間ほどの怒涛のカラオケが終わり、ぼくたちは祠堂行きのバスへと乗り込んだ。 まだ門限には早い時間だったので、バスは空いていた。 ギイはぼくと並んで座ると、やれやれといったように息をついた。 「疲れた」 「ふふ、歌うのってけっこう体力使うから」 「みんなでオレのこといじめるからだ」 「いじめてなんかないよ」 笑いながら言っても説得力はないだろうな。ギイも胡散臭そうにぼくを見ている。 「でも久しぶりに楽しかったな。まさかこのメンバーでカラオケに行くことになるなんて思わなかったから」 「オレだって。でもまぁ、託生が楽しかったんなら良かった」 ギイはバスの中に人があまりいないのをいいことに、ぼくの左手に指をからめた。 きゅっと力を込められて、ぼくも同じように握り返す。 「あの歌・・・」 「うん?」 「ぜんぜん違う曲にはなってたけど、上手かったよ、ギイ」 「そっか?」 まんざらでもないようにギイが笑う。 「オレももうちょっと歌が上手になるように練習するかな。で、あの歌をちゃんと歌えるようになったら、託生が聞き惚れて、今度こそ『四六時中も好きと言って』って言ってくれるかもしれないし?」 「まだ言ってるよ。でもギイが歌が上手になったら、何だか完璧になりすぎちゃって困るな」 「どうして?」 「何でもできるギイも好きだけど、歌が下手でみんなにからかわれてるギイも可愛かったから」 「可愛い???」 心底嫌そうな顔をして、ギイが深々とシートに沈み込む。 「託生に可愛いなんて言われる日が来ようとは・・・」 「何だよ」 「そういうこと言うお前の方がずっと可愛いってこと」 ギイはそう言ってぼくの耳元にキスをした。 みんなでカラオケに行ってから数日間、ぼくはギイの歌った音程はずれの夏の名曲が頭から離れなくて苦労した。何しろ一度聞いたメロディは忘れないのが、ぼくの特技の一つなのだ。 「元のメロディが分からなくなりそう」 調子外れのギイの歌。 だけど、それがぼくの中では、これから先もずっと夏の定番になりそうな予感がしてならなかった。 |
一度は書いておきたいギイの歌下手話(笑) お礼画面ではロマンティック(?)な豆話だったのに、何だか脱力系の笑い話に。合体させたのが間違いだった。