「え。子供ができた??」 「うん」 ギイの背広を受け取りながら、託生がうなづく。 一瞬後、ギイはぎゅうぎゅうと託生を抱きしめた。 「よしっ、よくやった託生!いや、この場合、よくやったのはオレか!って、いてっ!!」 「なに馬鹿なこと言ってんだよ。ぼくのわけないだろっ!」 ギイの足を容赦なく踏んづけて、託生がギイの拘束から逃れる。 「じゃ誰だよ」 「タクミだよ。どうも妊娠してるみたいなんだよね」 「・・・・え」 「ギイ、タクミって避妊手術してなかったの?」 「まだ小さいからしてなかった」 「小さいのは身体だけだろ?子猫じゃないんだからさー、何も考えてなかったの?」 「誰かと一緒にするつもりもなかったし・・・って、ちょっと待て、相手は・・」 「ぎいだろ。他に誰がいるのさ」 「ああああ、そうだよなぁ」 何故だかギイががっくりと肩を落とす。 同じ屋根の下で暮らしているのだから、当然と言えば当然だ。 「計算するとさ、ほら、二度目のお見合の時じゃないかなーって思うんだよね」 「なにっ!あいつ、一発必中だな。さすがというか何というか」 何て手の早いヤツだ、とギイは低くうなる。 「子猫の貰い手探さなくちゃ。あと、去勢手術させなくちゃな」 「ぎいの?」 「タクミの方でもいいけど、子猫増えても困るだろ?」 「だが、あの二人の子供ならめちゃくちゃ可愛いぞ」 「それはまぁそうだけど」 「去勢手術は同じ名前を持つ者としていたたまれないし、タクミの避妊手術の可哀想だし」 ぶつぶつと考えこむギイに、託生はやれやれと肩をすくめる。 託生もけっこうな猫馬鹿だと言われるが、やっぱりギイには負ける。 「しかし、ぎいに先を越されるとは。託生、オレたちも頑張って・・」 「頑張ってもできるわけないから!!!」 がっしりと抱きつかれたギイの鳩尾に一発お見舞いして、これ以上阿呆なことを言われないうちに、と託生はケージの中で仲良く寄り添う二匹の猫と遊ぶために猫の間へと避難するのだった。 |