疑惑


日曜の夕方、食堂でギイと葉山と赤池という、去年までよく目にしたスリーショットを見つけた。
珍しいこともあるもんだ、と声をかける。
「矢倉か、一人なんて珍しいな」
赤池が隣の席を促してくれたので、ありがたく席につく。
目の前に座る葉山はどこか元気がない。箸を口元へ運んでそのまま下ろすの繰り返しだ。
「どうした葉山。食欲ないのか?」
「うん、ちょっと胸がムカついて。フライものは辛いなぁ、あっさりしたものが良かったな」
「胸がムカつくなんて、葉山ぁ、子供でもできたか?大事にしろよ」
「な、なに言ってんだよっ、矢倉くん」
真っ赤になって葉山がうろたえる。
「ギイもちゃんと避妊しろよな」
「今度から気をつける」
顔色ひとつ変えずにギイが返す。
ちぇっ、こいつはホントにからかい甲斐がない。それに比べて葉山はホントに面白い。
「ギイも、何馬鹿なこと言ってんだよ」
と葉山が隣のギイをこづく。
「だけど子供できたら困るだろ?」
「そりゃ困るけど、って、どうしたって子供なんてできるわけないだろ。ギイのばかっ」
「どんな状況下でも常に可能性はある、って前にも言っただろ?大丈夫、できないように気をつけるから安心しろ」
「・・・・・」
ぽんぽんと葉山の頭を叩くギイと、あまりの馬鹿らしさに言い返すことすらできない葉山。
さすがの赤池も笑いを堪えた表情だ。
こういう3人を見ていると、去年に戻ったようでほのぼのとする。
いつもこんな風にしてられたらどれだけいいか、ときっとギイが一番そう思ってるんだろうな。

ちなみに、葉山の胸焼けの原因は、街に下りたときに食べたケーキバイキングのせいだったらしい。
つまらない、と言うと葉山は「つまらなくてけっこう」と一人憮然としていた。




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あとがき

ギイは失敗しないから安心!(たぶん)