ラウンド3 ラウンド当日は絶好のゴルフ日和だった。朝一番に迎えに来てくれた章三くんと一緒に、崎さんと葉山さんをピックアップして、1時間ほどでゴルフ場に到着した。 「緊張してきたー」 私が言うと、葉山さんが大丈夫だよと笑った。 「だけど、ぼくも初めてのときはすごく緊張したなー。ほら、ルールとか作法が分からないからさ。どうしたらいいか分からなくて」 「そうなのよね」 「でも今日は身内ばっかりだし、赤池くんもいるし、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」 葉山さんてほんと優しいなぁと会うたびに思う。何ていうか、癒し系? それに比べて。 「でもねぇ、章三くんはマナーとかに煩いのよね。ほんと時々喧嘩になるの」 「ゴルフは審判のいない紳士淑女のスポーツだ、だろ?ぼくも何度も言われたよ」 「やっぱり?」 二人してくすくすと笑ってると、先にチェックインを済ませた章三くんと崎さんがやれやれというようにこっちを見ていた。 そういえば崎さんてヤキモチ焼きなんだっけ。 あんまり葉山さんと仲良くしてると 怒られちゃうのかしら? ちょっと想像できないんだけどなぁ。 ロッカールームの鍵を受け取り、着替えに行こうとすると、崎さんに止められた。 「奈美子ちゃん、そっちじゃなくて、あっち」 「え?」 見ると、従業員らしき女の人が軽く会釈をした。 どうやら普通のロッカールームではなく、個室を貸してくれるらしい。 崎さんはVIP扱いらしくて、何から何まで至れり尽くせりだった。 「はー、やっぱり崎さんてセレブだったのねぇ」 こっそりと章三くんにつぶやくと、何を今さらと笑われた。こういう特別対応されることに難色を示しそうな章三くんでさえ、当たり前のような顔をしている。 「そのうち慣れるよ」 葉山さんまでもがにこやかにそう言う。 どこまでもセレブな崎さんを見ていると、絶対私は彼女になんてなれないなと思う。 やっぱり生活レベルが同じ人の方が気が楽だ。 そう思うと、葉山さんてすごいなぁとしみじみ思ったりするのだ。 |