ラウンド5 スタート時間まで少しあったので、ちょっと練習でもしようかということになり、章三が奈美子ちゃんに付き合って、パター練習が始まった。 打ちっ放し場でパターって練習できないから、このラウンド前のちょっとした時間が貴重なのだが・・・。 「だから、打つ時に顔上げるなって」 「だって上がっちゃうんだもん」 「とりあえず下を向いとけよ」 「無理よ、ボールがどこ行くか気になるもん」 ほのぼのとした二人の会話が聞こえてくる。 ぼくとギイはグリーン周りに設置されたベンチに座って、のんびりとそれを眺めていた。 「初々しいなぁ。ああいう章三が見れるのって貴重だと思わないか?」 「思う。赤池くんて奈美子ちゃんには優しいんだね」 「当たり前だろ。彼女なんだし」 「だって想像できなかったんだよね、あの赤池くんがさー」 ぼくとのパター練習の時は、そりゃもう辛口トークなのにさ。 ぼくはしげしげと仲良く練習に励む二人を見つめた。 奈美子ちゃんが打ったボールが大きく外れると、章三が何やら言葉をかける。 ころんと上手くカップに入った時の、奈美子ちゃんが嬉しそうに章三見る目は何とも微笑ましいもので、ぼくはこういうのが普通のカップルなんだーと、まるでドラマでも見ているような気持ちになっていた。 「さて、託生も練習するか?」 「あ、そっか」 忘れてたよ。のんびりしてる場合じゃなかった。今日こそベスグロ更新しなくちゃ! 「今日は3パット1回につき、キス1回」 「・・・あのさ、それって罰になるのか微妙なんですけど」 だって別にギイとのキスは嫌じゃないし。罰ゲームにはならないよね? 「あのなー、誰が2人きりの時にキスするなんて言った?」 「は?」 「罰ゲームだからな、3パットしたら、その場でキスだ」 「はー???」 章三と奈美子ちゃんの前で?いくらぼくたちの仲を知ってる二人でも、さすがにそれはあり得ない。 だいたい章三に何されるか分かったもんじゃない。 「練習するっ!!!」 「はい、どうぞ」 ギイがボールを転がす。 ラウンド開始まで、ぼくは必死に練習をし、ギイはギイで、そこまで嫌がらなくても、とちょっと拗ねていた。 |