ラウンド6 「今日はアウトスタートだな」 「アウト?」 奈美子がカートの隣に座る託生を見る。 「えっとね、ゴルフコースって1番から18番まであるだろ?1番から9番までがアウトの9ホール、10番から18番がインの9ホールなんだ。だから今日は1番からスタートってことだね」 「ふうん。でも何となくインっていうと1番っぽいのにね」 「それはさ」 とギイが声をかける。 「普通は1番から順番に18番まで回るだろ?ということは、1番と18番が一番クラブハウスに近いよね?」 「うん」 「つまり、1番からスタートするとクラブハウスから遠ざかっていくからGOING OUT、出かけるっていう意味で、10番からスタートするとGOING IN、帰ってくるっていう意味になるんだ。だから1番スタートはアウト、10番スタートはインになる」 「へー」 感心したようにうなづいたのは説明をしたギイ以外の3人だった。 インとアウトの呼び方はもちろん知っていたが、その由来までは知らなかった章三と託生である。 「そっか、そうやって覚えればよかったんだ。ぼくも1番がアウトって覚えにくかったんだよねぇ」 「分かる。どうも感覚的には1番ってインだよな」 章三もうなづく。 ギイはやれやれというように軽く肩をすくめた。 「ねぇ、じゃあ4人のうち誰か一番最初に打つの?ジャンケンとかで決めるの?」 奈美子が素朴な質問をギイにする。 「ああ、それはスタートホールに、えーっとくじびきみたいな棒が置いてあるんだよ。そこに1本から4本までの線が入っていて、みんなでそれを引いて順番を決める。2ホール目からは前のホールで一番スコアのよかった人がオナーになる」 「ふうん」 「あ、でも奈美子ちゃんはレディースから打てばいいから、くじびきはしなくていいよ。女の子の方が少し前から打てるんだよ」 「そうなんだ」 すべてに置いて初めての経験の奈美子ちゃんは、目をきらきらさせて楽しそうだ。 昔は自分もそうだったなーと託生はしみじみと思う。 「奈美、めちゃくちゃ飛ばせるようになったら、同じレギュラーから打ってもいいぞ」 章三がからかうように言うと、奈美子ちゃんはよーしと闘志を漲らせていたけれど、女の子でレギュラーティから打てるくらいまで上手にならなくてもいいと思う託生であった。 |