ラウンド8 「崎さんも、葉山さんも、ここにお菓子置いておくから良かったら食べてね」 奈美ちゃんがカートバッグの中から袋に入ったお菓子を前籠に入れてくれた。 ゴルフしてると小腹が空くので、お菓子はすごーくありがたいのだけれど。 章三を含むぼくたち3人はうーんと首を傾げた。 「どうかした?」 「いや、めちゃくちゃありがたいんだけど、どうやって隠そうかと思ってさ」 ギイが笑う。 「隠すって?」 「あのね、奈美子ちゃん。ゴルフ場ってすごくカラスが多くて、みんながグリーンに立ってカートが無人になると、食べるものがないかって漁りにくるんだよ」 「カラスが?」 「そう、カラスが」 今まで何度もカラスの襲撃にあった。 鞄の奥底に隠しておいたお菓子でさえ、鞄ごとひっくり返されて略奪された。 「ヤツら、お菓子が入ってそうな鞄とか分かるみたいでさ、おまけに鞄を漁ってもちゃんとお菓子だけを持っていくんだよなぁ」 章三が苦笑して肩をすくめる。 カラスは頭のいい鳥だから、本当によく見ているし、集団でやってきたりもするのだ。 最近のカートにはカラスよけのために、籠の上に網を被せられるようになっているものもあるくらいだ。 ぼくたちの話を聞いていた奈美子ちゃんは信じられないというように眉をひそめた。 「怖い」 「そうなんだよねー。ぼくも初めて襲われたときはびっくりした」 とりあえず奈美ちゃんが持ってきてくれたお菓子は、カート備え付けの保冷BOXの中に入れた。 ここなら大丈夫だろうと思っていたのだけれど、どこかでその様子を見ていたらしいカラスたちに、やっぱり見事に持っていかれた。 まだ一つも食べてないお菓子を持っていかれると本当に悔しい。 次のラウンドの課題は、カラスにいかにしてお菓子を取られないかだということで、そのあとぼくたち4人は異様に盛り上がった。 |