ラウンド10 ハーフが終了してクラブハウスに戻ってくると、ぼくたちは例のごとく支配人に案内されて個室へ通された。ほんと、何から何まで至れり尽くせりだ。 「うわー、すごい部屋」 豪華な部屋に奈美子ちゃんが興奮してきょろきょろと辺りをを見渡す。 「さて、昼メシにしよう。とりあえず生3つ。奈美子ちゃんは何か飲む?」 「あ、えーと、私は食後にコーヒーでいい」 まるで高級レストランのようなメニューを、奈美子ちゃんは興味津々で眺めている。 さすが名門コースのレストランだけあって、どれもこれも美味しそうだ。 レディースランチなどもあるし、女子にも優しい。 ぼくもこのコースは初めてなので、どれにしようかなぁとメニューをめくる。 「奈美、言っておくけど、ここは特別だからな。普通のゴルフ場はそれほど飯は美味くない」 「そうなの?」 「そんなに食事に時間かけないからなぁ、混んでるときって本当に短いし。女の子にはちょっときつい時もあるよな」 ギイが運ばれてきた生ビールを受け取り、代わりに食事のオーダーを済ませる。 今日の食事の時間は1時間もあるので、比較的ゆっくりできる方だ。 ランチが運ばれるまでにお互いに前半のスコアを確認しあうと、なかなかいい勝負だということが分かった。 「葉山、上手くなってるなー、スクラッチで正解だな」 「うー、でもいっつも後半でめちゃくちゃになるんだよ」 「飯食って腹いっぱいになって、身体が回らなくなるんだろ?」 「葉山の場合、昼にビール飲むのが良くないんじゃないか?アルコールが抜けないうちに太陽の日差し浴びるから、へろへろになるんだ」 章三が容赦なく分析してきた。 うーん、確かにそれは言えてるかもしれない。 ぼくはまだ一口しか飲んでいない生ビールをずいっとギイの方へと差し出した。 「何だよ?」 「今日はやめとく。ギイ、それ飲んじゃって」 「お前ー。オレを酔わせてどうするつもりだ?」 くすくすと笑いながらギイがぼくのジョッキを手前へと寄せた。 どうするつもりって、そりゃギイをコテンパンにやっつけるつもりだよ、とは口にしない。 毎回ギイには痛い目に合わされてるから、今日は絶対にリベンジだ、とぼくは密かに決意するのだった。 |