いきなり降って湧いたかのように現われた赤ちゃんは、それはもう天使のように可愛かった。 ギイの遺伝子を受け継いでいるのは明らかなほどそっくりで、思わずため息を漏らして、じっと見入ってしまう。いくら見ていても飽きることがない。 もちろんぼくだって例外じゃない。 例外じゃないけれど!! 「いったいどこで作ってきたのかな?義一くん」 ぼくが睨むと、ギイは、 「カリフラワーから生まれたかな」 と悪びれずに答えた。 そんなこと、今時小学生だって信じるわけがない。 ぼくはぱんっと両手でギイの頬を叩いた。 「痛いって」 「ギイの子だよね?」 「これだけ似てるからなぁ」 「相手は誰?」 「託生に決まってるだろ。オレ、託生と付き合い始めてから、他の人とセックスしてないし」 「ぼくは産んだ覚えはないよっ!!」 それ以前に子供ができる身体でもない。 「じゃあやっぱりカリフラワーかな。いや、サンタだな。今日はクリスマスイブだし」 超リアリストのギイとは思えない馬鹿げた台詞に、ぼくは開いた口が塞がらなかった。 小さな赤ちゃんはギイの人さし指をきゅうきゅうと握っては、ギイを蕩けさせていたが、やがて火がついたように泣き出した。 「何だ?」 「なに、どうしたの?」 一体何がどうなったのか分からず、ぼくたちはおろおろと泣きじゃくる赤ちゃんを見守った。 しばらくあれやこれやと機嫌を取っていたが、一向に泣き止む気配がない。 「な、奈美子ちゃん!」 「え?」 ついこの前、章三と奈美子ちゃんには赤ちゃんができたばかりで、実は昨日もみんなで会っていたのだ。 奈美子ちゃんならきっと助けてくれるに違いない。 ぼくはわらにもすがる気持ちで、章三に電話をした。 3へ |