その朝



「おはよう、託生」
まだ起きたくないな、と寝返りを打つと、ギイが背中から覆いかぶさってきた。
さらりとした肌の感触が気持ちいい。
「重いよ、ギイ」
「んー、愛情の重さと思って、な?」
どこか嬉しそうな声色のギイに、ぼくは昨夜のことが蘇ってきた。
ギイとの初めての夜のことは、実はあんまりよく覚えてなくて、ただただギイが優しかった記憶しかない。
だから昨夜、ギイと二度目の夜を過ごして、何ていうか・・もちろんぼくもちゃんと分かってての行為だったら、いろんなことを鮮明に覚えてて・・
「どうしよう・・・」
「ん?どうした?」
ギイがむき出しの肩に口付ける。そのまま首筋へ、耳元へ。明確な意思を持って繰り返されるくちづけに、ぼくは慌てて身を捩った。
「だめ、だからね、ギイ」
「何が?」
「あ、朝から変なこと考えたら!」
「変なことぉ?」
とたんにギイが不機嫌そうに眉をしかめる。
「ごくごく普通のセックスしかしてないと思うんだけどなぁ。でもまぁ託生がちょっと変わったことしたいっていうなら、勉強するかな、オレも」
「ちがっ・・そんな意味じゃないよっ」
慌ててギイへと向き直ると、ギイは笑いを堪えた顔でぼくを見ていた。
「・・・からかったね、ギイ」
「半分冗談、半分本気かな。託生がして欲しいことなら、何でもするから遠慮せずにリクエストしてくれていいぞ」
優しく口づけられて、ぼくは思わず笑ってしまった。
「好きだよ、託生」
「うん・・・」
「朝だけどもう一回したい」
「・・・・」
答える代わりにそっとギイの肩に手を回した。

嬉しそうに微笑むギイに、ぼくはまた恋に落ちる。


BACK

あとがき

「愛するということ」の二度目の夜・・・を過ごしたあとの朝(ややこしい!)