「知ってるか、ギイ」 矢倉がそういう聞き方をする時はロクなことがないと分かっている。 分かってはいるが、聞かないともっとまずいような気がして先を促した。 「1年生たちの間で、俺とギイが付き合ってるって噂」 やはり聞かない方がよかったか、と思ったが矢倉はなおも続ける。 「何だってこんなでかい男二人が付き合ってるなんて思うんだろうな。あり得ないってーの」 「それはこっちの台詞だ」 「俺だってお前みたいな可愛げのない男を押し倒す趣味はない」 「は?矢倉、万が一オレたちが付き合ったとしてもだ、オレが下になることはない」 「待て、じゃ何か、俺がギイに押し倒される方ってか?ますますあり得ないだろ。俺たち二人だったら、どう考えてもギイが下だろ」 自信満々に言う矢倉だが、まったくもって理解できない。 どう考えればオレが押し倒される側なんだ?? いや、別に矢倉を組み敷きたいわけじゃないが!! 「どう思う、葉山?」 オレの隣で、黙々と本日の弁当を食べていた託生は、顔を上げると、 「うーん、まぁどっちがどっちにしても、ギイと矢倉くんだとベッドがすっごく狭いんだろうなぁって思うよ」 託生のどこかずれた感想に、矢倉がぶはっと笑い出す。 「さすが葉山」 「え?どうして?」 きょとんとする託生に脱力する。 お前、もうちょっと自分の彼氏の貞操の危機を心配しろよ・・・なんて思う方が間違っているのか。 いや、何が間違ってるって、矢倉とオレが付き合ってるだなんて噂だ!!! (下)へ |