※下世話ネタ注意(またか!) ※いろんな意味でごめんなさいな話です。 昔、高校生活最後の文化祭に、ギイの妹がやってくるんじゃないかという噂がまことしやかに流れたことがあった。 もちろんそれはガセで、結局ぼくはそれからも長い間ギイの妹に会う機会はなかった。 別に会わせたくないわけじゃなくて、単にタイミングが会わないだけだ、なんてギイは言ってたけど、大事な大事な妹を隠しておきたいだけなんじゃないのかなぁなんて思ったりもした。 ギイは、妹の絵利子ちゃんのことを「ブラコンだ」なんてニヤけながら言うけれど、ぼくからしてみれば、ギイだって相当「シスコン」だと思う。 そりゃまぁあのギイの妹なんだから、めちゃくちゃ美人で、きっと目に入れても痛くないくらい可愛がってるんだとしても不思議ではない。 そして、祠堂を卒業して数年。 大学の長い夏休みを利用してNYに行った時に、ぼくはギイから妹を紹介してもらうことになった。 初めて会った絵利子ちゃんは、ぼくの想像を遥かに超えていた。 ギイを初めて見たときも眩しいなぁなんて思ったけれど、それ以上にキラキラと眩しくて、ぼくはしばらくぼーっと彼女を見つめてしまったくらいだった。 とにかく、ギイの妹は想像以上にゴージャスだった!! 「おい、お前、魂抜けすぎ」 ギイが不機嫌そうにぼくの頬を摘んだ。 NYに滞在する時はいつもギイのペントハウスにお世話になるのだけれど、今回は2人でカナダへ旅行へ行く予定をしていて、翌日の出発のことを考えて、その日は空港近くのホテルに泊まることになっていた。 まだ絵利子ちゃんに会った衝撃から抜けられないでいるぼくは、ソファに座ってぼーっとしていたらしい。 ギイがコーヒー片手に隣に座っても気づかなくて、むにっと頬を摘まれてようやく我に返った。 「たーくーみー、お前、ほんと分かりやすいヤツだな」 「だって、すんごく綺麗だった」 「そうかぁ?」 そりゃギイはね、見慣れてるから分からないんだよ。 初めて絵利子ちゃんに会ったら、絶対みんな魂抜けてしまうんじゃないかと思う。 顔立ちはギイと良く似ていて、黙っていればちょっと冷たい感じがするのだけれど、笑うとすごく可愛い。そのギャップも印象的だった。 肩のあたりでくるんと巻かれた長い髪はギイと同じ色だ。白い肌に大きな目。 友達とキャンプに行くとかで、Tシャツにジーンズという究極のシンプルな格好をしていたのだけれど、かえってそれが絵利子ちゃんの美しさを引き立てていた。 ころころと良く変わる表情はどこか勝ち気そうにも見えたけれど、ギイに甘える様子は見ていてほのぼのとして可愛らしく見えた。 緊張しているぼくを気遣って、たぶん英語の方が日常的に使っているのだろうけど、日本語で話してくれた。 少し話をしただけでも頭の回転の良さは伝わった。そういうところもギイに似てるなと思った。 大好きなお兄さんの男の恋人という立場のぼくは、正直なところ、絵利子ちゃんに会うのはちょっと怖い気がしていたのだけれど、絵利子ちゃんは何の屈託もなくぼくと接してくれた。 ボーイフレンドの数がいつも両手では足りないらしいのもうなづける。 とにかく、絵利子ちゃんは想像以上にすごく魅力的な女の子だった。 「何だかオーラがあった」 「へぇ」 「テレビのアイドルよりずっと可愛かった」 「ふーん」 ギイはどんどん不機嫌になる。自分の妹にヤキモチ妬くなんて、と呆れつつも、これ以上機嫌が悪くなると、ぼくへの逆襲が始まりそうなので、ちゃんと誤解を解くことにした。 「あのね、ギイ、ぼくもあんな綺麗な妹が欲しいな、ってことだから」 「・・・」 「あんなに可愛い妹がいて羨ましいよ、ギイ」 それは嘘ではなく本心だった。 ぼくには妹はいないけれど、あんなに可愛い妹がいたら、そりゃシスコンにもなるだろう。 ぼくも絵利子ちゃんみたいな可愛い妹をうんと可愛がってみたいと思う。 ようやくそこでギイがほっとしたように、まんざらでもない笑みを見せた。 「でもま、オレには託生の方がずっと可愛く見えるけどな」 「・・・ギイ、一度眼科に行った方がいいよ」 いや、託生の方が可愛い、と言ってギイはぼくにキスをする。 ほんと、惚れた欲目って怖いなぁとしみじみ思う。 「まぁ、絵利子と仲良くなれそうで安心したけどな」 「もし絵利子ちゃんに、ぼくとのことを反対されたらどうするの?」 もうそんなことはないと分かっているので、ぼくはそんなことを聞いてみる。 絵利子ちゃんに会う前だったら絶対に聞けない質問だ。 ギイはソファに乗り上げるとぼくの身体を押し倒した。 「誰に反対されたって、オレは託生の手を離したりしないよ」 「・・・うん」 「愛してるよ」 「うん」 ぼくも大好きだよ、と告げるとギイは嬉しそうに笑って、ゆっくりとぼくに口付けた。 たぶん、ぼくがおかしな夢を見たのは、絵利子ちゃんに会った衝撃があまりにも強かったせいではないか、と思う。 ぬくぬくと温かいベッドの中で目が覚めた。 部屋はカーテンのせいでまだ薄暗かったけれど、そろそろ起きる時間だろうなということは分かった。 ぼくは、ぼくに背を向けて眠っているギイへと身を寄せた。 ギイに起こされるまで、もうちょっとだけ眠ろうかな、と思ったのだ。 さらりとしたギイの肌が気持ちよくて、ぼくは彼の背中に額をくっつけて、腰に腕を回してみる。 (あれ、ギイちょっと太ったのかな) 触れた指先に感じたのはどこかふにゃっとした感触だ。 これは夜中にアイスクリームばっかり食べてるせいに違いない。 夜に食べるアイスクリームは確かに美味しいんだけど・・・ (今夜からアイス禁止) ぼくはそう決めて、大きく息をついた。太ったギイなんて想像できないし、ちょっと嫌だけど、その柔らかい感触は気持ちいい。 ぼくがぎゅっとギイを抱きしめると、ギイは低くうなって寝返りを打ち、ぼくを抱きしめようと、もぞもぞと体勢と変えた。 向かい合わせに抱き合うと、胸元から立ち上がるギイの甘いコロンの匂いが鼻をくすぐる。 大好きな香りに思わず鼻先をくっつけた時、違和感を感じた。 (ん?あれ?) いつもにはない柔らかな感触に思わず目を開けた。 そして一気に目が覚めて飛び起きた。 「ギイっ!!!!!!!」 「んー、うるさいなぁ。何だよ・・・・」 「何だよじゃないよ、起きてよ!」 ギイはふわぁっと欠伸しながら片肘をついて半身を起こした。 少し長めの髪が額にかかる。 それをかきあげる白く細い手首に釘付けになった。 「・・・あれ?」 ギイも何かがおかしいと気づいたようで、ぱちぱちと何度か瞬きをした。 ぼくは目の前のギイの姿を凝視して、真っ青になっていたと思う。 だって、ギイはどこからどう見ても女の子の姿になっていたのだ。 昨日会った絵利子ちゃんに良く似たその姿。 いや、絵利子ちゃんをもっとシャープにした感じで、ゴージャスに加えてビューティフルという言葉がぴったりのとびっきりの美人だ。 そりゃそうだよね。男だったときでさえあんなに綺麗なギイなのだから、女になったら美人にならないわけがない・・・じゃなくて!!!! 女の子?? どうして?何で? ぼくの頭はパニック寸前だ。 「何だ、オレ・・・どうなったんだ?」 ぺたぺたと自分の頬に触れ、その手が胸元を探る。 「・・・胸が・・ある?」 はだけたシャツの胸元からちらりと覗いているのは、女の子のそれだ。 ギイはおもむろに両手でがしっと自分の胸をわし掴みにした。 「ちょっとギイっ!!!」 どこからどう見ても女の子なのに、そんな風に胸をわし掴みにする姿は見たくない。 「何だ、オレ、女になっちまったのか?」 さして驚く風でもなく、ギイは自分の身体を触りまくって確認する。 (これは夢だ) ぼくは自分の頬をつねってみた。 どう考えても現実のものではない。 夢だ。夢に違いない。っていうか、夢でしかありえない!! (早く目覚めなくちゃ!!!) そう思っているのに夢の世界が終わる気配はまったくない。 どうしよう。困った。女のギイなんて困る。 何がどう困るかよく分からないけど、やっぱり困る。 おろおろとするぼくを見て、ギイはやれやれというように肩をすくめた。 「託生、そんな顔するなって」 「だって!!!」 「それにしても、オレ、貧乳だな。どうせならもっとグラマラスな身体になりたかったぜ」 ぺろんとシャツの胸元から中を覗き込むギイに、ぼくは慌てた。 男だったら何てことのない仕草でも、女の子がすると見ているこっちの方が恥ずかしくなる。 「ギイ、何ともないの?どこか痛いとか、いや違うよね、これ、夢だよね?早く目覚めなきゃ・・」 「どこも痛くないし、何だろうな、これ。何でこんなことになっちまったんだ?」 「何かおかしなもの拾い食いしなかった?」 「するわけないだろ、失礼なやつだな」 ギイはぺちんとぼくの額を指で弾くと、そのままぼくの肩を引き寄せた。 「とりあえず、おはようのキスな」 「ちょ、ちょ、ちょっと!!!だめだよっ」 思い切りギイの肩に手を突っ張って、ぼくは朝の挨拶を拒否した。 「何でだよ」 とたんに不機嫌になったギイ。その顔さえも、どこからどう見ても可愛い女の子のものだ。 「だって・・・女になったギイじゃないか・・ギイじゃないよ・・・」 もう泣きたいくらいだ。 どうしてこんなおかしなことになっているのに、ギイは平気なんだ? ああ、そうか、夢だからだ。 (神様早く目覚めさせて!!) ギイはつまらなさそうに鼻を鳴らすと、逃げるぼくをあっさりと抱きすくめて、強引に唇を合わせてきた。 慣れ親したんだ甘い口づけ。ゆるりと舌を絡められるとそれだけで息が上がりそうになる。 「んっ・・・」 ちゅっと濡れた音をさせてギイが唇を離した。優しい瞳で見つめられて、ぼくは赤面した。 だって、とんでもない美少女になったギイに見つめられて冷静でなんていられるはずがない。 「おはよ、託生」 「・・・・おはよう」 そのまま頬にもキス。 首筋を片手で掴まれて、その手がパジャマの襟元から中へと忍び込む。 そしてあっと思う間もなく、ぼくは再びベッドに横たえられ、ギイに組み敷かれていた。 「・・・えっ」 それはいつものことと言えばそうなのだけれど、今はそんなことをしている場合ではないはずだ。 だってギイは女の身体になっているわけで、なのにどうしてぼくが押し倒されなくちゃいけないんだ! やや、別にぼくが押し倒したいわけでもないんだけど。 「ま、待って待って、ギイ!!おかしいよっ」 「何だよ、何がおかしいんだよ?」 ギイの器用な指先がぼくのパジャマの釦を外していく。そりゃもう見事な早業で。 「だってだって・・・ギイ、女の子になっちゃってるし、それなのに、どうしてぼくの服を脱がすんだよっ!!」 必死にギイの手から身を守ろうとベッドの端へと身を寄せる。 ギイは呆れたような視線でぼくを見ると、これみよがしにため息をついてみせた。 「あのなぁ、託生」 「・・・」 「オレが女だから何だっていうんだ?何の問題があるんだよ。オレたち恋人同士だよな?だったらキスしたって、セックスしたっていいはずだよな」 「う・・・」 相変わらず立て板に水でぼくに反論する隙を与えない。 問題ないわけないだろ!!と心の中で叫んだところで、ギイに届くはずもなく、黙ることは承諾の印というギイの持論通り、ぼくがあれこれと考えている間に、ギイはぼくの身体を抱き寄せて、首筋に吸いついた。 「わーっ、だめだめだめだめ」 どれほど逃げようとしたって無駄な努力で、ギイはとても女の子とは思えない馬鹿力でぼくを押さえ込んだ。熱い舌先が耳朶を舐め上げ、その濡れた感触にぼくは身を竦めた。そんなぼくを楽しそうに見つめ、ギイはパジャマのシャツの裾から手を差し込んで素肌に触れてきた。 「や・・・っだ・・・」 開いた唇を塞ぐようにして何度も口づけられる。徐々に激しくなる口付けに息をすることすら苦しくなって、ぼくはギイの肩を何度も叩いた。 「は・・・っ・・はぁ・・・」 長いキスからようやく解放されたと思ったら、ギイはぼくの手を掴んで自分のシャツの中へと導いた。 「ギイっ・・・」 「触って、託生」 いつもなら見惚れるほどの見事な腹筋があるはずの腹部は柔らかく、胸元はそれ以上に柔らかくて、ぼくは慌てて手を引っ込めようとした。それを許さずギイが自分の胸にぼくの手を押し当てる。 「ほら、ちゃんと触って、託生」 「・・・っ」 耳元で甘く囁かれ、ぼくはぎゅっと目を閉じた。指先に触れているギイの胸は、やっぱりいつもの感触とは全然違って、けれど、その滑らかな肌触りの誘惑に勝てずに思わずくすぐるようにして撫で上げた。 ギイは気持ちよさそうに笑うと、片手でぼくの下衣を脱がせた。 「託生・・・硬くなってる」 「・・・っ!!」 ギイはわざと恥ずかしいことを口にして、ぼくが困るのを見るのを楽しむのだから性質が悪い。 昔っからそういう傾向はあったけど、最近それがひどくなってきてると思う。 ギイの細い指先がぼくの屹立を下から上へと辿っていく。いつもとは違う感覚にぞくぞくと背筋を快楽が駆け上がっていくのを感じた。 「濡れてる・・」 先端を丸く撫でられて、その心地よさにため息が零れる。 ギイはすっかりされるがままになったぼくに気を良くしたのか、首筋から胸元へ舌を這わせ、何度か肌に赤い印を残しながら、徐々に下腹部へと頭を下ろしていった。 「やっ・・だめだよっ、ギイっ!」 「いいから黙って」 「・・・っ」 熱い咥内に含まれ、ぼくは思わず背を反らした。 くちゅっといやらしい音が絶え間なく聞こえて、ギイの舌に翻弄される。我慢しようと思っても、知らず知らずのうちに声が漏れてしまい、その甘ったるい声が自分のものだとは思いたくなくて何度も首を振った。 「あっ・・・ぁ・・・っ」 きゅっと吸い上げられて、もう少しで放ってしまいそうになるのを何とか耐えた。 ギイは顔を上げると、ぺろりと濡れた唇を舐めた。その仕草さえもぼくを煽るには十分なもので、絶対わざとしてるに違いない。 ギイはぼくの身体の脇に両手をつくと、いたずらっぽい瞳でぼくを上から覗きこんできた。 「託生、キモチ良かった?」 「・・・っ・・」 「もっと気持ちよくしてやるよ」 むき出しになった肩先に口付けを落とし、ギイは足を開いてぼくの身体に跨った。 「なぁ、入れて?」 「え?」 一瞬何を言われてるか分からず、ギイを見つめた。 ギイはまだ熱を保ったままのぼくの屹立に手を添えると、その上に腰を下ろそうとする。 「ちょ、ちょっと何考えてるんだよっ、ギイ、だめだよっ!」 「どうして?」 「ど、どうしてって・・・だって・・・・」 女の身体をしているくせに、声はいつものギイのままで、だから目を閉じていたらいつもと同じギイに触れられてるような気がしていた。 だけど、今ぼくの上にいるギイの身体は女の子のもので、それでそういうことするって、つまり・・・。 ぼくがギイのことしちゃうってこと? 「託生、オレの中に入れて?」 嫣然と微笑むギイにうっかり見惚れている場合じゃない。 「だめだめだめ・・・ギイ・・・っ」 何がどうだめなのかよく分からないけど、何だかとんでもないことを迫られてる気がする。 だって、ここにいるギイはほんとのギイじゃないし、そういうことするのって、本当のギイにすごく悪い気がする。 ぼくがいくら抗っても逃げられるわけもなく、ギイはふっと上体を反らすと腰を下ろし、ゆっくりとぼくを受け入れていった。ぬるりと濡れた感触に包まれて、思わず息を呑んだ。 熱くて・・・言葉にできないほど熱くて・・ぼくはどうしていいか分からずに差し出されたギイの手を握り締めた。 「動いて、託生」 「・・・っ」 無理というように首を振ると、ギイは小さく笑って、自ら前後に腰を揺すり始めた。 あまりの心地よさに言葉もなかった。ただされるがままにギイに高みへと連れていかれる。 「ふ・・・っ・・んっ・・・」 きつく握り締めた手の温もりや、ベッドの軋む音、時折聞こえるギイのため息にも似た甘い吐息。 何度も経験したはずなのに、夢なのか現実なのか、その境界線が滲んでいく。 「ギイ・・・っ」 文字通り、飛び起きたぼくは、ドキドキと高鳴る心臓を静めるために大きく深呼吸をした。 自分の声で目が覚めるなんて初めてだった。 「・・・・よかった。やっぱり夢だった・・・」 それはそれで安心できたんだけど・・・ ぼくは隣ですやすやと眠るギイを横目で見つつ、立てた膝に顔を埋めた。 「もう・・・最悪だよ・・・」 朝起きて、下着の中が気持ち悪いことになっているなんてこと、もうずいぶんとなかったというのに。 それもこれもすべてギイが悪い。 ずいぶんと勝手な言い分だとは分かっているが、ギイが夢の中でぼくにあんなことしたせいで、こんな恥ずかしいことになったんだ! ギイのバカっ! 「・・・いや、ほんとに夢だよね」 ぼくはそっとギイの顔を覗きこみ、恐る恐るその胸元に手を当ててみた。 もちろんそこには何の膨らみもない。夢の中ではギイ曰くの貧乳であっても、それなりに柔らかさがあった。 ちらりとシャツを捲ってみると、そこにはいつもの綺麗な腹筋が見える。 「よかった」 心底ほっとして、いや待てよ、と確実に夢だったと確認するために、ぼくはその下へと手を伸ばした。 (・・・大丈夫) 今度こそあれは夢だったと確信できて、ほっとした瞬間、ぼくの手首をギイが強く掴んだ。 「わっ!!」 「何してんだ、託生」 ギイはぼくの手首を掴んだまま上半身を起こした。 (これは・・・この状況はめちゃくちゃまずいんじゃないかな・・・) だって朝起きたばかりぼくが、ギイの身体・・・それも普通なら触るなんて失礼極まりない場所を触っていたのだから。 知らない人が見たら、ぼくは立派な変質者だ。 「あああああ、えっと、違うんだ、ギイ、これは、えっと・・・」 慌てて手を引っ込めようとした手を、ギイがぐいっと自分の方へと引き寄せる。 「託生が寝起きを襲ってくれるなんてめずらしいこともあるもんだ」 「だから違うってば!!もう、いいから離してよっ!」 「お前なー、人のことその気にさせといて何言ってんだ」 「か、勝手にその気になったんだろっ!だいたいギイはさっきだって・・・」 「さっき?」 (違った、あれは夢の中での出来事だった) ぼくがどこから話せばいいかとぐるぐる考えているというのに、ギイはぼくを強引にベッドに横たえてキスをすると、あろうことかパジャマのズボンの中に手を滑り込ませてきた。 「あれ・・?お前・・・」 「わーーっ!ばかっ!!だめだってば!!」 ぼくは思いっきりギイのことを突き飛ばした。火事場の馬鹿力というのは本当にあるもので、まるでコメディの一コマみたいに、ギイはベッドから転がり落ちた。 「託生、機嫌直せよ」 「・・・・・」 「別にそんなに恥ずかしがることじゃないだろ。そういうのってオトコの生理っていうか・・・わっ」 ぼくは手にした枕でギイを叩いた。 いくら恋人同士でも知られたくないことだってあるじゃないか! どうして分かってくれないんだよっ!おまけに・・ 「ギイのせいなのにっ!」 「何でだよっ!」 まだ何もしてないのに理不尽な、とさすがのギイもむっとする。 しばし2人で睨みあって、やがてぼくは重い口を開いて、夢の話をギイに聞かせた。 黙ってぼくの話を聞いていたギイだったけれど、途中からニヤニヤし始めた。 「そりゃまたすごい夢を見たもんだ」 「そうだよ。もうあり得ない世界だったよ」 「オレ、美人だった?」 「・・・・貧乳だったけどね」 言うと思わず笑いが込み上げた。ギイはちぇっと舌打ちして、どうせならグラマラスな美女が良かったなぁと夢の中と同じ台詞を口にした。 「ところで託生」 「なに?」 「女のオレとしちゃった感想は?」 「え?」 ギイはずいっとぼくへと身を寄せると、肩を抱き寄せて耳元にキスをした。 絶対に聞くだろうと思っていたその質問に、ぼくは眉をひそめた。 「あのね、ギイ、しちゃったというよりは一方的に襲われた感じだったんだけど」 「だけどキモチ良かった?」 「ぼくは嫌だって言ったのに、ギイが上に・・・」 言ってしまってはっとした。ギイはとたんに目を輝かせる。 どんな風にしちゃったのかなんて、詳細に話したわけじゃないのに、ばかばか、ぼくの馬鹿! ギイは、そうかそうかと一人悦に入っている。 「やるなぁ、オレ。女になってもちゃんと託生のこと押し倒したんだ」 「おかしな感心するなっ」 ぼくがむにっとギイのほっぺたを引っ張ると、ギイは楽しそうに笑った。 それにしても、絵利子ちゃんの影響であんな夢を見たのだとしたら、今度会う時にまともに顔を見られないかもしれない。 ギイは自分が女になったなんて馬鹿げた夢に対しては別段怒るでもなく、むしろ面白がってる節があって、どこまでも楽天的だなぁと、あらためてギイの凄さを実感して、ぼくは何だか救われたような気がした。 もちろんもう二度とあんな夢は見させないでください、と強く強く神様に祈ることは忘れなかった。 |